7.認定特定非営利活動法人 アースウォッチ・ジャパン

〇テーマ:

石垣島白保のサンゴ礁保全調査プロジェクト

〇概要:

沖縄県石垣島白保地域におけるサンゴ礁の保全を推進し、現地の住民がサンゴ礁の価値を再認識するとともに、赤土流出抑制対策に協力することを目標に、全国のボランティアと現地住民が連携してサンゴ礁の保全調査に取り組む。本調査を実施することによって、住民とボランティアが共にサンゴ礁の価値を学び合う機会を創出する事業をおこなった。

〇実施内容

上述した現地での野外調査プログラムでは、研究者とボランティアが連携して、陸域と沿岸海域の両方向から赤土流出対策の効果を調査・分析した。プログラムは、(1)シュノーケルで海に潜り、海底に溜まっている土砂を採取する赤土堆積量調査 (2)海域への赤土流出対策として農地の周囲に植栽したグリーンベルトの生育を計測する調査 (3)地元農家の家業を手伝いながら、白保におけるサンゴ礁文化や地域産業の歴史、住民と海の関わりを聞き取る白保の里海文化調査を行った。
一般公募で集まったボランティアは、20代から70代までの幅広い年齢層の人々で、積極的に調査に従事するほか、研究者に質問したり、NPO夏花や現地住民と交流し、調査で得た知識や経験を共有した。

2017年6月:
募集告知の準備・研究者及び地元団体との調整
本事業で購入したゲットウ36本、イトバショウ520本の苗木を条件の異なる農地に植栽。
7月:
調査プログラムに参加する一般市民を公募。
参加ボランティアにプログラム解説書を配布するなど、参加手続き等
9月6日(水):
-9日(土) 
3泊4日
市民参加型の調査プログラムを1回開催し、市民8名を派遣し、海底の赤土堆積量、陸域のグリーンベルト植栽の活着状況及び里海文化を調査。
10~12月:
研究者による調査結果のとりまとめ
2018年1月:
報告書作成
3月:
関係者への配布

 

〇結果と考察

・現地農家の意識変化とグリーンベルトのメリット
本事業により、地域外から参加したボランティアと現地住民との間に積極的な対話が生まれたことにより、グリーンベルトの所有農家にもサンゴ礁に対する意識の変化が見られるようになった。
里海文化の調査では、農家の間に観光と新たな生業複合のあり方として「半観・
半農・半漁」という考え方があることや、協力農家が感じているグリーンベルトに対するメリットが見えてきたことも大きな収穫であった。
今後、グリーンベルト対策を進めるにあたって、この点をアピールしながら進めていく予定である。

・調査研究の成果
世界的に劣化が進むサンゴ礁環境の保全と再生を図るために、陸域からの赤土等
汚染物質の流入を効果的に防ぐメカニズムの開発に寄与することが求められている。本事業により、陸域から流出した赤土の堆積量などの科学的データが充実し、赤土堆積のメカニズムに対する知見が蓄積された。
また、本事業でゲットウ36本・イトバショウ520本といった一定量の苗木を購入
し、農地周辺にまとめて植栽できたことで、苗木がグリーンベルトとして根づく過程を評価することが可能になった。またグリーンベルトは、これまで管理の必要性が問われていなかったが、本事業により樹木の特性に合わせた管理が必要であることが分かってきた。特にゲットウは、その生育状況にばらつきが大きく、継続的な管理が重要であることが明らかになった。
今年度の活動により、これまでの調査手法が改善されたほか、課題であったグリ
ーンベルト植栽直後の活着率を測定する手法の開発も進み、ボランティアがスムーズに調査をできるようになった。
 
■海域での赤土堆積量調査と分析

 
■グリーンベルトの植栽と活着状況調査

 
■里海文化調査と現地農家との情報共有