3.法政大学大学院 CSR研究所

〇テーマ:

「シェアリングエコノミーを活用した高齢者と地域をつなぐ社会参加 ~つくば市での多世代交流プログラム実践とコミュニティケアの構築~」

〇概要:

超高齢社会の中で今後社会保障の質の充足は難しくなる。厚労省も地域包括ケアシステム構築から2040年に向けた地域共生社会に向けた取り組みをスタートしている。より高齢者が持てる力を発揮して、地域に関わり活躍をする。そのことにより地域のつながりを維持し、心身の健康維持にも寄与することが可能であろう。本事業では高齢者の社会参加を促していくシステムや支援体制づくりを主目的に、地域関係を築くと共に、そのツールとしてICT活用しシェアリングエコノミーについての可能性を探索することにある。

〇実施内容:
①社会参加支援事業

1-1
2019年7月26日(金)つくば並木児童館 参加者6名 児童40名
「アルテナラピッコロ ~アーティストの活動から学ぶ子どもとの関わり~」
講師:アルテナラ 竹丸草子さん、堀光希さん、DROPさん
1-2
2019年10月17日(木)筑波大学 参加者 カフェロマン4名
「認知症にやさしい街のデザイン」参加
講師:徳田雄人(NPO法人認知症フレンドシップクラブ理事)、森光輝(社会福祉法人七五三会 企画室長)、河野禎之(筑波大学人間系障害科学域助教)
1-3
1-3 2019年10月20日(日)、11月17日(日)、12月15日(日)~ビーンズ地域総合ケアセンター
「ケアビレッジつくば~健康とケアを学ぶ体験型イベント~」
1-4
2019年10月26日(土)つくば市中央公園
「Run伴いばらき」
1-5
2019年11月10日(日)~ビーンズ地域総合ケアセンター
「アルテナラつくばファシリテーター講座~地域で子育て~」
1-6
2019年11月24日(日) 茨城県立医療大学 
「作業科学学会での懇親会サポート~地域マーケット~」
参加スタッフ:12名。医療スタッフ、デイ利用者、小学生、大学生。
1-7
2020年3月1日(日) ビーンズ地域総合ケアセンター 中止
「カフェロマン会議vol2~認知症にやさしい街のデザイン~」
1-8
2020年3月15日(日)~つくば市梅園地区
「まめいちキッズライター講座」

②地域活動サポーター育成事業

2-1
2019年7月3日(水)~毎月開催 ビーンズ地域総合ケアセンター 
「イノベーションワークショップ~イベントの作り方~」参加者:のべ70人
2-2
2020年2月9日(日)茨城県立医療大学
「第20回茨城作業療法士学会~高齢者の社会参加アプローチ~
③ICT活用事業
 
3-1
ICTフィッター講座開催(2月)
3-2
スマホ講座FITTERスタート(3月)
3-3
音楽療法オンラインサロン(3月・4月) 参加者:13名(オンライン)

 

〇事業の効果:

①目的
本事業で目指すべきことはICT活用により高齢者の移動や情報のアクセシビリティを向上し、社会参加を促すことである。活動や社会参加の実績数が増えることで健康増進や自立支援の高い効果が見込まれる。いかなる要介護状況になっても高齢期を幸せに生きることは全ての人、家族にとって大切な課題である。充実した高齢期を迎えることは若い世代の人生に対する希望にもなる。
目標は活躍ができる機会を増やすことであり、地域の中で助け合いの機会を増やしていくことである。
地域住民の協力を得ながら、介護保険サービスを利用している要介護者の社会参加プログラムのあり方についても調査を行い、プログラム開発を行なっていく。また引き続き地域とのコミュニケーションツールとしてICT活用の可能性を探り、より地域とのつながりの中で生活の質の向上を図っていく。共生社会に向け、多世代が活躍できる場作りを行うとともに、コミュニティケアの学びの場作りを行ない、地域での支え合いについて意見の集約を行なった。

②全体のまとめと考察
超高齢社会に入り、つくば市においても高齢化による社会課題の議論が深まっている。人口オーナス社会に突入し、人口動態の変化は急速であり、今後は人口減少と生産年齢人口減少による課題が顕著となってくる。厚生労働者は2025年に向けた社会保障のあり方として互助を中心とした地域包括ケアシステム構築を目標としていたが、現状では概ね完成している見解である。今後は2040年に向けた地域共生社会に向けた議論が中心となってくる。
これに伴い市民一人一人が自分の人生や地域生活をいかに考えていくのかが問われている。その実現に向けて、地域社会の中で何が担えるのか地域のステークスホルダーとともに議論を深め、貢献していくべきである。そして地域の質(Quality of Community)の充足をKPIとすべきであると考える。これまでの保険内での関わりや医療・介護の立ち位置ではクライエントのニーズを達成できない。クライエントの「カスタマーサクセス」を達成するためには、地域社会に出ていかねばならない。むしろ、医療・介護が多様なアクションを同時多発的に起こし、そこでの知見をもって政策提言を行なっていくべきである。
今回、我々は医療職だけでなく地域住民や要介護利用者を含めてチームを組み、地域マルシェに出店をはじめとしたプロジェクトを行なった。その取り組みの仕組みや経緯について説明を行っていく。

〇活動内容のまとめ:

①地域マーケット「まめいち」の出店参加
・地域課題:要介護や認知症の方がスキルや経験があっても、何もできない人と不活発な生活を送っている。
・方法:地域コンセプト「地域で子育て」を掲げ、スキル「つくばの美味しいものを知っている」を使って、子供達にギフト「おいしいスープ」を送る循環を作る。
・効果①:まめいちでのたくさんの買い物、子供達へのやさしいおもてなしと言った「まちの風景」がみられた。
・効果②:地域の人から相談に受けるようになる。OTが参加することで車椅子ユーザーなど利用者が参加しやすくなった。

②イベンターワークショップ、ケアビレッジつくば
・地域課題:同じ志を持つが一人で悩んでいる人が多く、作業遂行での悩みの内容も概ね一緒。
・方法:ビーンズ地域総合ケアセンターにて毎月第1水曜18時半よりミーティングを開催。
・効果①:ケアビレというつくばケアチームにて自主企画をたててイベントを開催できた。
・効果②:地域住民や医療職などのネットワーキングを行ない、想いを共有することができた。
・効果③:作業療法学科学生が実習の場として教育と連携ができた。

得られた知見を以下のようにカテゴリー化を行った。
①やさしいまちづくりに必要なもの・・・地域への愛着、困りごとのシェア
②地域の人たちと活動をしていくコツ・・・マルチステークスホルダー・アプローチ
③地域コンセプトで関わる・・・ギフトの循環と共感経済

在宅復帰し、閉じこもりになるクライエントがいかに住みなれた地域にて笑顔で暮らしていけるかという問いからスタートしました。
紆余曲折、挫折や失敗もたくさんしてきました。地域の課題は地域に出なければわかりません。そして、地域の方と協業を行い、医療・介護を知ってもらうことから、新たな可能性が生まれてきます。ひとりでは何もできませんが、つくばという同じ地域に暮らす仲間がつながることで、地域の中に作業を増やし、様々な接点を作っていきます。自分の作業、自分の想いを持って、一緒に仲間や地域の未来について考えていくことが大切である。

③実施後の課題解決についての整理
地域共生社会づくりに向けて、フェーズを分けた。①まずは担い手づくりを行い、②活躍できる場の創出が必要となる。それをファシリテートする必要性があり、つなぎ合わせるための具体的なツールも必要だ。担い手づくりとして、機械立案、ネットワーキング、試行の場の提供を行った。継続的に実施し、他の規格者のサポーターとなるなど参加の形を多様なものとすることで多くの知見を作ることができる。様々なつながりやセレンシビリティがイベントを発展させるものとなった。

場の接点を作ること、テーマを持つことで多世代交流といった横展開も可能であった。個人的なストーリーを重要視し、地域コンセプトの立案を行った。その中で「地域で子育て」に関わろうということで、食、アート、ものづくりに関するイベントを開催した。

参加者であり、企画者であり、スタッフといった多様な参加のあり方を提供できたことは意義深い。認知症にやさしいまちづくりを目指す市民団体「カフェロマン」の利用者はケアビレッジの中で得意な音楽のレコードでDJを行った。来場していたファンの方との音楽について話をし盛り上がった体験をした。後にその方は講演の中で「認知症、要介護になって自分が楽しんでいいのか葛藤があた。しかし、ケアビレッジでDJを行い、他人と音楽の楽しく話をできたことは大きかった。そのようなことはもうないと思っていた。外出をして、人と繋がることはとても大切だ。」と振り返っている。

場が発展し、地域に認知されつつあり、参加者とその気持ちが集まるにつれ活動の内容自体もバラエティに富んだ内容となっていった。地域共生まちづくりとは定型的なものではなく、すでにあるものや住民の中から生まれ、有機的に繋がることで、その街に即したものとなるのであろう。パーソナリティや地域の困りごとからスタートする形づくりを地域に提案することができた。今後はより地域住民や医療介護関係者を巻き込み、社会参加が行えていない要介護などの高齢者の可能性を広げる活動の継続して行く必要がある。

そして、情報を得るツールとしてICT活用は重要な視点である。しかしシニアは苦手意識があり、それを解決する必要がある。そのため生活や健康場面で使えることに注目したスマホ活用方法についてプログラムを立案し、情報量や視認性などを考慮した資料作成を行った。

その折、新型コロナウイルスが流行し、人と人とのつながりをさせない社会環境が出来上がってしまった。そのためにいくつかのイベントが中止・変更を余儀なくされた。
接触しない地域交流の機会が社会の要請として求められていた。その中で社会参加の取り組みで得たノウハウやシニア向けのスマホ講座のプログラム内容が課題解決に有用であると感じた。活動の中止を余儀なくされたイベント主催者と連携を取り、オンラインサロンでの開催を進めていった。体験をすることでイメージがつき、受け入れやすくなっていった。
今後は新しい地域のつながりや健康、死活支援のあり方が求められる。今回の調査や実践の中で得た地域を必要な人の元に届け、より健康で笑顔の多いまちづくりに寄与していきたい。