2023(令和5)年度(第25回)3.竹田 響

○研究テーマ

『日本国内で行われている在日朝鮮人の冠婚葬祭に関する文化人類学的研究』

○事業内容

本研究は、個人研究で行った。研究期間内に文献調査を行った他、大阪・京都・神奈川・東京・埼玉・札幌で在日朝鮮人の冠婚葬祭に関する調査をフィールドワークならびに参与観察を実施した。(札幌では2024年6月に、大阪・京都では2024年10月ならびに2025年2月に、神奈川・東京ならびに埼玉では2024年5月と11月~1月にかけて断続的に調査を実施した。)

その他、2024年11月にはアメリカ・タンパで行われたアメリカ文化人類学会(世界で一番大きな文化人類学会)において研究内容に関する学会発表を行った。(アメリカ文化人類学会での学会発表にかかる渡航は11月18日から24日にかけて行った。)

○事業者のコメント(事業実施により得られた効果)

本研究では、在日朝鮮人によって日本国内で行われている冠婚葬祭に着目し、儀礼の形式がどのように変化しているか、また儀礼を通して日本国内で親族の相互の関係性がどのように構築されているのかを考察することを目的とした。調査は大阪圏、首都圏、ならびに札幌圏において行った。
調査を通して、冠婚葬祭の儀礼については時代の変遷によって服装や形式が変化している他、式場となる会場でも、在日朝鮮人の風習に合わせてキムチやトック(朝鮮半島式の餅)を提供する等、特徴的な対応が見られた。加えて墓については、寺の納骨堂などに一時的に預ける、といった一時的な安置を行うケースがこれまで多かったが、墓を建立したり、納骨堂のまま永代供養を希望する人びとが増えていた。
加えて、儀礼を自宅で行うことで、自宅が親族の集まる場、となってきたが、少子化・高齢化に伴って、儀礼を行う場所も寺などに変化してきていることが明らかとなった。

埼玉県にある墓地の一つ。右側は日本式の墓であるが、左側は在日朝鮮人が故郷の墓に近い形を模して築いた墓である。両者は方角、墓の形、埋葬方法が異なっている。

2024年11月にアメリカ人類学会で発表を行った際のプレセッション会場にて。